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JTTAが石油コンビナート等における災害防止でとりまとめ
「時間をつくって技術を伝承していくことが必要」と小幡会長

 日本タンクターミナル協会(JTTA、小幡柾夫会長)では3月に石油コンビナート等における災害防止に関する取りまとめについてホームページで公開した。2014年2月に内閣官房の主導で総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省の3省も参加し「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議」が設置され、対策を検討。最近の重大事故の原因・背景にかかわる共通点、重大事故防止に向けて事業者や業界団体が取り組む対策、国や地方自治体等の関係機関が連携して取り組む事項がまとめられ、同5月にJTTA等の関係業界向けに「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について」の要請が通知された。これを受けてJTTAでは、①事故情報の提供②安全教育の実施③事故防止対策の実施④国土交通省の視察⑤JTTA年間活動――について整理した。

 「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議」の報告書では、最近の重大事故の原因・背景にかかる共通点のひとつとして、「人材育成・技術伝承の不十分」が挙げられた。JTTAの小幡会長は「技術というと“ものづくり”の技術ととらえがちだが、物流のハンドリングという技術もある。その伝承がうまくいっていないのではないか」と指摘する。

 技術の伝承の妨げとなっているのが、アウトソーシングや分業の浸透。「昔はボルト1本締めるのも一から自分たちで行った。TPM(Total Productive Maintenance=全員参加の生産保全)活動の一環として社員で行っていた作業が、人材不足や効率化、コストの観点からアウトソーシングされることが増えている。設備の構造に関する知識が欠けていたり、基礎を知らないことがミスや事故につながっている」とみる。

 「設備を使って作業していれば、『ここがいつもと違う。おかしい』と気付き、事故の未然防止につながる」。それには、先輩が後輩に対する指導やアドバイスが有効だが、「少ない人数で効率的なオペレーション」を追求している企業が多く、「無理をしてでも時間をつくって技術を伝承していくことが重要。人的余裕があり、空いた時間を使ってベテランから若手に自然に技術伝承できる時代ではない」と強調する。

 報告書で求められている事業者が取り組むべき対策のひとつがリスクアセスメントの徹底。小幡氏は「同じ作業を繰り返していると慣れがでてきたり、気が緩んだり注意が散漫になったりする。それがミスや事故につながる。管理者は作業に集中できない人に対し、リスクのある作業に就かせないことも大事。また、ナイーブな人に対しては上司や同僚による仕事以外のメンタルケアも必要だ」と話す。

 危険に対する感性を高めていくことも課題とされる。「事故が起きて、実際に体験してみないと本当の危険がどんなものかは分からない」がそうはいかない。JTTAでは安全教育の一環として、消防庁危険物保安室の講師による勉強会や他団体主催の講演会への参加、石油コンビナート地区や会員企業の施設見学を目的とした研修会を実施しているが、「今後、より実践的な研修についても検討していきたい」という。

(2015/5/28 カーゴニュース誌掲載)

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