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内外輸送 小幡 柾夫 社長に聞く
「現場力」高める人材重要
荷主と協力し物流費適正化

 内外輸送はタンクターミナルをはじめ、危険品や高圧ガス倉庫などの貯蔵施設を構えるとともに、全国を網羅する物流ネットワークを駆使して輸送までの自社一貫体制を構築している。堅調な需要を背景にタンクターミナル市場はタイト基調で推移しており、業界内で新増設やM&A(合併・買収)が活発化する一方、同社は人材や安全対策、物流効率化などに重点を置く。小幡柾夫社長(日本タンクターミナル協会会長)に今後の方策や見解を聞いた。

 

▼…タンクターミナルの足元の事業環境は。

 「稼働率は総じて高水準を維持しており、ほぼ100%で推移している。こうした状況を背景に、タンクの新増設や危険品倉庫の建設などを進めている企業もあるが、当社としてはそうしたハード面だけでなくソフト面の充実が重要と考えている」

▼…具体的にはどういった点でしょう。

 「比重や粘度が異なる多様な化学品を取り扱うため、従来は技術やノウハウの継承で対応してきた。しかし、それが難しくなってきている現状を受け、人材の質の維持を図ると同時に、マネジメント力や物事を見抜く力などを持った人員を適材適所に配置することが重要だ。安全対策にしても人的要因が占める割合や負担が大きいことから、AI(人工知能)など先端技術の活用による自動化・機械化の可能性も並行して探るべきだろう」

▼…そのために必要な取り組みは。

 「常に『現場力』を高めることが必要だ。とくにタンクターミナルは危険物を扱うため、いわゆる『報連相』しやすい体制を整えなければならない。ヒューマンエラーやトラブルを防ぐためにも、悪い事象こそ素早く正直に報告することが求められる。そのためにも従来は職人気質的な部分に頼ってきた作業に対応できる人材の育成や人材教育に重点を置き、現場における一層の体制強化につなげていく」

▼…現状の課題や問題点について。

 「昨今いわれている人手不足や賃金などの労働環境については、当社としてもタンクターミナル業界全体としても決して悪い方ではないと思っている。働き方改革が叫ばれているが、業種や業態によって労働条件などが異なるのは当然で、一律に実施することに対しては疑問を感じている。スローガンや目標を打ち出しただけで仕事や作業を行ったような雰囲気が生まれることも散見されるが、実行や中身がともなわなければ意味がない」

▼…上昇傾向といわれる物流費に対しての見解を。

 「以前から低位横ばいが長期にわたって続いたと考えており、現在の状況は上昇や値上げというよりも、ようやく是正されてきたとの認識を持っている。もちろん当社や業界でも物流コストを抑えるための自助努力は継続しているが物流費には昔のように聖域とせず、荷主や顧客との協力関係を維持しながら適性な料金に設定されることが最善ではないだろうか」(聞き手=及川紳一郎)

(2018/6/8化学工業日報 掲載)

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