日本タンクターミナル協会
液体危険物の物流担うタンクターミナル業界

日本タンクターミナル協会は液体危険物の保管と物流を手がける企業からなる業界団体で、広い意味では倉庫業に属している。液体危険物を取り扱う上でのノウハウを必要とすることに加え新規参入が困難なターミナルを所有していることなどから物流に欠くことのできない重要な役割を果たしている。
ここにきてタンクターミナルの業務内容は従来の保管だけでなく、荷姿の変更・小分け・加温のような流通加工も加わり多様化している。様々な作業に対応した設備の導入や品質確保に向けた取り組みにも積極的だ。
一方、タンクターミナル業界では作業環境の安全対策を進める動きが活発化している。液体危険物を取り扱うことから、従来より積極的な対策がとられてきた同業界ではあるが、近ごろの安全意識の高まりやコンプライアンスを重視する動向を受け、その傾向がより強まってきている。「安全対策として不可欠なのは適切で計画的な設備の補強です。業界では、高度な品質管理をする上でも設備投資は重要な取り組みで、安全性の向上により顧客の高い信頼が得られるとみています」と日本タンクターミナル協会の小幡柾夫会長は解説する。
数年前に比べ同業界は活況を呈している。化学工業ではプラントの統廃合や再編が行われてきたが、その影響は受けていない。さらにタンクターミナル業は参入企業が限られることから設備の増設もみられている。
安全対策が最大のテーマである同業界だが、その取り組みは設備投資だけにとどまらない。「安全の標語を掲げるだけでは不十分で本物の安全安心を現場で身につけることが重要との姿勢で臨んでいます。例えばヒヤリ事例にしても報告件数を競うだけでなく情報を共有し現場の意識として生かせるような人材育成が必要です」(小幡会長)。
業界団体としても勉強会などで安全に取り組んでいる。勉強会は単に聴講するだけでなくディスカッションなどを通し情報の共有や交換も進めれば、業界全体の安全意識を底上げすることで事故防止につながると期待している。
宅配なども含め一般物流業界では運賃の値上げが目下の関心事となっているが化学品物流業界でもこのところ運賃は上昇している。ただこれは一時期物流費の削減圧力が強く長期にわたって運賃が低い水準に抑えられ続けていたのがもとに戻っていると見ることもできる。
物流業界では繁忙と人手不足が課題となっているが、他の物流分野に比べタンクターミナル業界の離職率は低いとされる。同時にタンクターミナル業界でも多品種小ロット化のような需要環境の変化への対応に加え安全対策を進めるうえでも人材確保がテーマとなっている。
液体危険物を手がけタンクなどの設備も要するなど物流の中でもタンクターミナルは独自の役割を担っている。「タンクターミナル業界は液体危険物を専門に扱うニッチな業種ですが、物流業の中では小さくとも社会に不可欠であることを知っていただければ幸いです」と小幡会長はその意義をアピールする。
(2019/3/29 日経産業新聞 掲載)